藤井画廊 第18回  

2023年12月19日 FF-Staff 0

かつて、2022年のFFカレンダーのために「ANGEL BOYS」という12人の天使の絵を描いた。今回、それを素材として新たなアート作品に仕上げた。12枚の絵を6枚ずつに分けて、二つの十字架型の額に入れたもの。それが「GOOD BOY ANGEL & BAD BOY ANGEL」である。 片方は、GOOD BOY ANGEL。いわゆる素直ないい子で、スポーツも勉強もできそうな、優等生の天使たち。もう片方は、BAD BOY ANGEL。悪戯好きで素行の悪そうな、反抗期の劣等生っぽい天使たち。 二つの十字架を見た時、必ず、自分はこっちが好きだと感じる方があるはずだ。そう、この作品は、あなたに「いい子の天使と悪い子の天使、どちらが好きですか?」と問いかけているのである。まぁ人それぞれ好みは分かれるだろうが……私が考えるに……多分……BAD BOYを選ぶ人が多いような気がする。とくに女性はそうなる気がするなぁ。いや、そういう風に誘導しているわけではないですよ(笑)。どう考えても常識的には真面目で誠実な方が“いい”はずなのに、なぜか悪い方に魅力を感じる心理。平凡な恋より危ない恋に惹かれるように、人間の持つ危険性への興味というのはあるのだろう。より極端に言うなら、“悪魔と天使”ということになる。今回は両方とも天使なので、そこまでの極端な心の葛藤はないだろうが。でも世の中、天使みたいな顔して悪魔みたいな人もいるからねぇ~。それ、一番怖いやつ! 作品を通じて見えてくるのは、自分の本質。いつかあなたも、この作品を生で見る機会に本当の自分を知ることになるでしょう。このカレンダーを持っている人は、同じように並べてみるのもいいかもしれない。

藤井画廊 第17回  

2023年9月1日 FF-Staff 0

「Tower」シリーズ これまでにも紹介してきたEd TSUWAKI君とのコラボレーション展で、最後に描き上げた「Crescent night」という作品がある。エド君が変わった仮面を被った3人の女性の絵を描いてきたのに対して、私は斜めに傾いたTower(タワー)を描いた。エド君の絵から受けたイメージは、“謎めいた舞踏会”。そこで、舞踏会が開かれている変わった会場を想像し、建物を描いたのだ。キャンバス自体はそれほど大きなサイズではない。二人ともこの作品が気に入って、展示のメインビジュアルにも使用した。エド君はこの絵からインスピレーションを得て、さらに個展ができるほどの枚数を描いたらしい。自分も「Tower」というテーマが気に入って、別の作品を描いた。私の場合はスローテンポなので2枚しか描けなかったが。つまり「Crescent night」は、Towerシリーズ最初の作品ということになる。その後もいくつか描こうと思ったのだが、マスキングの作業が多くて結構時間がかかるため、今のところ2点に留まっている。 Towerシリーズのテーマは、「繁栄と崩壊」。建築物というのは、その時代における国や街や経済や企業などの社会的繁栄の象徴である。それこそエジプト文明やローマ帝国、平安時代など、昔から繁栄を示すために多くの立派な建築物が造られてきた。現代社会においてはハイタワー、つまり高層ビル。敷地を縦横に広げられない分、バベルの塔のように上へ上へと向かっていく。繁栄と崩壊は常に繰り返される。このテーマは面白いと思った。ただ、絵を購入するのは成功者が多いので、果たして彼らが「繁栄と崩壊」という不吉なテーマの絵を購入するかどうかは分からないが……。でも、描きたいテーマを絵にするのが画家だ。今回描きたかった建築物は、現代的ではなく、ピサの斜塔のような少々古めかしいデザイン。かつ物理的に建設は不可能で、まったく意味のない建築物であり、しかも傾いているもの。このTowerは倒れかかっているのか、それともあえて斜めに建てられたのか? 解釈は見る人の自由である。

藤井画廊 第16回  

2023年6月2日 FF-Staff 0

「reply」シリーズ From 『FFEd』FUMIYA FUJII & Ed TSUWAKI 前回紹介したのは、Ed TSUWAKI君とのコラボレーション展「FFEd」に出した作品の下描きだった。1枚の紙に、まず一人が先行として絵を描き、それを受け取った後手が作品を最後まで完成させる、というユニークなコラボレーション。 作品に共通して言えるのは、どれも想像していなかった仕上がりになったということだ。毎度「へぇ~、そう来たか!」と完全に予想を裏切られながら、不思議な喜びがあった。エド君は「その場のインスピレーションでサッと描く」と言っていたが、そのために相当あれこれ考えてはいたと思う。ひょっとしたら、別の紙で少しは練習したりしたかもしれない。なぜなら先手が描いたものは1枚しかないし、ある意味、後手は完成させる責任があるから失敗は許されないのだ。もちろん、何をどう描こうが失敗ということにはならないのだが。 これらの絵は、エド君と私が“往復ハガキの返事を書くような”コンセプトで誕生したことから、「reply」というシリーズ名になった。展覧会に20点を展示したうち、この「reply」シリーズは12枚を占めた。 「Girl & Car」まずエド君が、90年代のフォルクスワーゲン・ゴルフの車の絵を描いてきた。彼が昔、乗っていた車らしい。どういう意図で女の子の頭上に車を描いたのかは分からないが、若かりし頃のデートでも思い出したのかもしれない。ということは、この子は誰かに似ていたのか? それも分からない。 「LOOK AT ME」私が描いた目と唇の絵に、エド君はサラッと一筆書きのように裸体を描いた。そして「LOOK AT ME」(私を見て!)と英語のメッセージを添えた。目と唇だけという強い印象のモチーフの奥に、ふくよかな裸体を想像したのだろう。自分のすべてを見てほしいという願望の、ちょいエロチックな仕上がりになった。 「DOLL」今回のコラボレーションの中で最初に描いた絵だ。とりあえず何か描いてみようということで、幾何学的な裸体のようなものを描いてみた。先に私が描いたモチーフに、エド君はギターと細長い藁人形のようなものを描き足した。それにより当初のモチーフが、まるで使い古され、服を剥がされ壊れた人形の中身のように見えてきたのだ。仕上がりを見て二人であれこれ考えた末「DOLL」というタイトルにし、二人の描いた世界観が統一された。 「Ballet」先手で私が描いたのは、二人のバレリーナだった。エド君はそのバレリーナの間にカラフルな川のような流れを描き、違うエリアに分けた。この川は、果たして舞台セットなのか? エド君は冗談で「三途の川」などと笑っていたが、そう言われて見てみると、ピンクのチュチュが天国では水色になったということになる。なんとも不思議な二人のバレリーナになった。 ギャラリーに見に来てくれた人たちは、コンセプトと仕上がった作品をとても面白がってくれた。作品がいつかどこかの壁に掛けられた時、見る人は当然、一人の画家が描いた絵として眺めるだろう。しかしどれも不思議な絵なので、「この画家は一風変わった思考を持つ人間だな」と思うに違いない。そこが今回のコラボレーション作品の面白さである。 今後また二人でやることがあるかどうかは未定だが、制作自体が楽しかったので、「またいつかやってもいいね」とはお互いに思っている。今回一緒にやったおかげで、それぞれに新しいアイデアが生まれ、今はその絵を各自描いている。それだけでも十分やった甲斐があったし、大成功だったと言える。ちなみに、下描きを見たのはFFメンバーだけである。 ※前号「藤井画廊」はこちら

藤井画廊 第15回  

2023年3月10日 FF-Staff 0

「コラボレーションアート 下描き」 初めてコラボレーションアート展をやることになった。“二人のアーティストで1枚の絵を描く”という作品の展覧会だ。きっかけは、ギャラリーに空いている期間があると聞いて何かやろうと思ったものの、ツアーの時期なので新作を描く時間はほぼない。でも、どうせなら面白いことをやりたい。あれこれ考えた結果、二人展という形態を思いついたのだった。友人であるイラストレーターで画家のEd TSUWAKIくんに、二人展として作品を半分ずつ展示しないかと声をかけてみた。すると、どうせやるなら新作を二人で描くのはどうか?と提案してくれ、コラボレーション展をすることになった。二人でリモートミーティングをして「どんなことをやろうか?」「とりあえず何かやってみよう!」。 まず、お互いが画用紙に好きなように絵を描き、それを相手に渡す。つまり「先手」が半分まで絵を描き、「後手」がそれを仕上げるのだ。先手は、真っ白な画用紙に何を描くのも自由。後手は、描かれた下絵からインスピレーションを得て作品を仕上げる。ひとまずこのやり方で4枚描いてみることになった。 というわけで、これは私が先手として描いた4作品の下描きである。本番の画用紙に描くよりも前に、まず別の紙に描いてみたもの(これはラフだが、画用紙に描いた絵はもっと丁寧に描いている。実際の作品タイトルではない)。①ショートカットの女子 ②目と唇 ③バレリーナ ④幾何学的な裸婦どれも未完成で「このあとはよろしく!」みたいな無責任な絵である。このあと画用紙に描き直したものをエドくんに渡して、仕上げてもらう。二度描きなしというルールにしたので、相手に渡したらもう手を加えることはできない。後手の方が気楽で面白い気がするが、仕上がりの良し悪しは後手で決まるので責任重大でもある。おそらくタイトルも後手が決めることになるだろう。 エドくんは今回のテーマとして、「その場のインスピレーションで即興で描く」つもりらしい。一方、私は先手・後手どちらの時も、ある程度考えてから描くタイプ。その場のインスピレーションだけで描く手法は普段から好んでいないし、自分らしくない。もしトライしたとしても、結果的に時間をかけて細かく描いてしまうだろう。計算してないようで、している。計算しているようで、していない。丁寧に描くのが私の持ち味なのだ。 さて、私の描いた4枚の下描きに、エドくんがどんな絵を描き足してくれるのかワクワクする。そして自分もエドくんの描いたものに手を加えて完成させる。後手はお互いに、相手が想像もしなかった絵にしようとするはず。そこが今回のコラボレーションアートの醍醐味だ。今回は下描きしか掲載できないが、むしろこの段階を見られるのは貴重かもしれない。次号では完成形を披露できると思うので、お楽しみに!

藤井画廊 第14回

2022年12月16日 FF-Staff 0

「実験的版画」 カラーの筆ペンを使って、新たな技法の実験を試みた。 まず①の絵は、カラーインクを使った女性の点描画だ。カラーの筆ペンを使っているが、一見すると、なかなかの技法で描かれているように見える。②の絵は、完全に水で滲んでいる。これは見ての通り、描いた絵に水をかけたものだ。カラー筆ペンのインクは水性なので、霧吹きなどで水をかけるとインクが滲む。それを考慮して水をかけた。 さて、3枚のうち、どれが原画だと思うだろうか? 実は、②である。 まず②をカラーの筆ペンで描いた。それを水で濡らし、新しい画用紙を重ねて、その上から擦って版画にしたものが①なのだ。もう一度、同じように版画を繰り返した2枚目が③である。自分でも、まさかこんなに面白い点描風に仕上がるとは思わなかったので驚いた。もし①を点描で手描きしたら、そこそこ時間がかかる特殊な技法だと思う。①と③の2枚それぞれに、いい感じになった。さすがに3回目の版画はインクが流れすぎて無理だった。 このまま作品にしてもいいのだが、あくまでも実験の第一段階である。まだ1回しか試していない。原画を描いてすぐに濡らしたから、インクの滲みが良かったのか? 描いて時間が経過したら、このインクはどこまで滲むのか? その辺りはまだ不明だ。この技法をさらに試すのかどうかも、今のところ分からない。今後、この技法でもっと凝った絵を描くかもしれないし、描かないかもしれない。どちらにせよ面白い実験であり、なかなかの成功でもあった。 画家というものは、こうして試行錯誤しながら自分なりの技法を見つけ出し、それを極めて自分なりの作風を作ってゆくものなのである。さあ、いつ自分なりのオリジナルの技法が見つかるのでしょうかねぇ~?

藤井画廊 第13回  

2022年9月9日 FF-Staff 0

私のアートワークのひとつに、カレンダー制作がある。ご存知の通りFFメイルオーダー用カレンダーである。 毎年、秋が来るとスタッフから「来年のカレンダーはどうしますか?」と尋ねられ、「あぁ、どうしようかねぇ~」とやや投げやりな返答をする。なんせ12枚作らなければならない。これは結構な量なのだ。会社的な売上などというよりも、そこに「FFカレンダーが掛かってないと1年が始まらない」と思ってくれるFFメンバーがいる。そんな思いの方が強くて、来年のカレンダーはなし! などとは言わない。 いつから、そして何年作り続けているのだろうか。これまでCGだとか、透明なフィルムの絵を重ねてゆくもの、折って立体になるもの、やたらシールが多いもの……などなど、あらゆる形態で作ってきた。 ある年のこと。アイデアが尽きて、もう好き勝手に絵でも描いてみるかと思った。結果として、これがFUMIYARTの個展を16年ぶりに再開するきっかけとなったのである。 ふとNHKの「日曜美術館」を見ていたら、バーニー・フュークスの個展が特集されていた。それまで知らない作家だったが、素晴らしいセンスと技術の絵だなと感銘を受けた。会場が代官山のギャラリーだったので早速見に行くと、思った通り素晴らしい作品の数々に出会うことができた。そして、ひとつの作品を購入した。そこで主催ギャラリーであるアートオブセッションのオーナー、出川さんという白髪のおじさんと出会う。いろいろ話しているうちに「今はやってないんですが、実は自分も昔アートの個展をやっていたんですよ」と口にすると、「作品を見たいなぁ」と言ってくださった。最新作を手っ取り早く見ていただくために、まずはその年のFFカレンダーを出川さんに差し上げた。そうしたら「これは素晴らしい!」と、まぁ少々大袈裟に誉めてくださり、「毎年カレンダーを描かれているんですか? 他のも見たい」ということで、ここ数年分のカレンダーを見ていただいた。それから交流が深まり「いつか個展をやりませんか」という展開になり、2019年からのFUMIYART個展再開に至ったのだ。個展の話が出てからは自分も刺激を受け、盛り上がっていたのだろう。とにかく凄い勢いで絵を制作した。倉庫の中にある昔の作品をチェックし、新しい作品を制作した。久々にキャンバスに向かうといろんなアイデアも浮かんできた。こうして代官山でスタートした「The Diversity」が、現在も全国を巡回している流れに繋がっているのである。 今と昔のFUMIYARTの違いは、主催としてアートギャラリーが存在する。昔は事務所主催で、プロのキュレーターに入ったりしてもらいつつも、素人集団がやりたくてやっていた部分が大きかった。当時は、日本の美術界との繋がりなんてほぼゼロ。それが今では、ほぼ美術館で個展をやらせていただいている。これは出川さんがご尽力くださったことが非常に大きい。 さらに背景として、もうひとつ隠れた力も存在していると思っている。友人でもありアーティストでもある木梨憲武、ノリちゃんの力だ。というのも、自分が何年も個展をやっていなかった間もずっとノリちゃんは作品を作り、個展を続けていた。ノリちゃんのアートは徐々に大規模になり、さまざまな美術館で個展をやるまでになっていたのだ。自分が個展をやっていた頃は、日本の美術界では、あくまで“芸能人アート”くらいの見方しかされていなかった。日本美術界は敷居が高いのだ。それが時代と共に、今や現代アートはストリートのグラフティやアニメやマンガまで拡大した。アートオークションでKAWS(カウズ)がピカソ並みの高値で落札される時代なのである(余談だがNIGO®️の個人コレクションのKAWSが落札された価格は、なんと約16億4700万円。まだKAWSが無名な頃に描いてもらった絵らしい)。昔の美術界が好んだ美大卒の肩書きは必須ではなくなった。もちろん美大出身アーティストの技術と知識が羨むほど素晴らしいのは、今も変わらないが。そんな時代の流れの中で、芸能人であるノリちゃんは、いろんな美術館の門を開いてくれていた。つまり道なきところに道を拓いてくれたのだ。自分はその道を歩き、すでに開いた門から美術館に入っている感覚がしている。 さて、話が横道に逸れて長くなったが、「来年のカレンダーはどうしますか?」今年もまたその季節がやってきた。「2023年カレンダーかぁ……ん~、どうしようかねぇ~」。あくまで自由なアートとは異なり、カレンダーのための絵なのだ。毎月1枚めくると、あぁこの月が来たのだなぁとファンに楽しんでもらえる絵。 しかもメインである音楽の仕事の合間に制作するので、それ以外の人生の持ち時間と労力をその作業に充てることになる。単純に制作物として考えると、なるべく短時間で描けるような画材とモチーフを選べばいいのに、なぜか描き始めるとつい時間のかかることをやってしまう。それでもどうにか時間と労力を短縮するアイデアを模索する。サボっているわけではなく、意外にもそれが良いシンプルさや新しいアイデアに繋がるのだ。 例えば、2022年のカレンダーでは12人のエンジェルを描いた。エンジェルは裸なので服の柄を描かなくていい。翼の色は白だから、画用紙の白をそのまま生かすことができる。頭の光輪は金色1色なので、あれこれ色を選ばなくていい。光輪に入れた柄を目立たせるため、背景はあえてシンプルに1色のベタ塗りがいい。純真な少年像だから、モチーフとして女性はきっと好きなはずだとも思った。そのアイデアが出た時に、自分は天才だ!と思ったほどだ(笑)。 次のカレンダーも、手描きの12枚の作品になることは間違いない。描き始めたらしばらくは遊ぶ暇もないなぁ~。でも今やカレンダー制作は、自分にとってひとつのライフワークだと思っている。さあ、2023年FFカレンダーはどんな作風になるのだろうね?

藤井画廊 第12回

2022年6月3日 FF-Staff 0

ハァ~ッとため息が漏れる。ついに! ようやく! この絵にサインを入れたのだ。つまり絵が出来上がったということだ。 通常、自分の絵にはサインとともに年号を入れるが、この絵には入れなかった。なぜなら、いつから描き始めたのかも分からないくらい年月が経っている。描いては放置……を何度も繰り返した。もともとこの構図で水彩画を描いていて、同じ感じに油彩で描こうと思ったのだが、案の定そのままにはならなかった。絵は気分で変わる。油彩で仕上がりはしたが、自分の中ではその時点が完成とも思えなかったので、年号を入れるのをやめたのだ。 なぜ絵に年号を入れるのか。まずは自分のためである。後で見た時に、いつのものか、何歳の時に描いたのか分かった方が面白いからである。もちろん観る人も、年号があることで時代背景や自分の年齢と照らし合わせてもらえるだろう。でも、あえてこの絵には入れなかった……まぁ、これも作家の気分だ。 絵のモチーフは女性である。洞窟のような不思議な場所に横たわり、なぜか全身いたるところが燃えている。この女性、実は人間ではなく、ハワイ諸島の神話に登場する火山の女神ペレ(Pele)だ。とても気が荒く、嫉妬深い女神らしい。 とはいえ、最初からペレを描くつもりだったわけではなかった。描き進めるうちに、なぜか背景が洞窟になり、なぜか水が流れ、なぜか鉱物が現れ、なぜか火を吹き出したのだ。これは活火山の中にある洞窟だなぁ~。もうこうなったらこの女性は火の神様にするしかない。仏教だと不動明王が背中に炎を背負っているが、不動明王は男神。女性の火の神として思い浮かんだのがペレだった。「そうだ! この女神はペレだ!」と、それからペレを想定して仕上げていった。最初は白人女性を描いていたが、やはりペレならポリネシア系だろうと肌の色を濃くした。それならもう少しふくよかでもよかったなぁとも思ったが、体型はもう変えられない。むしろ、このやや細長くて人間離れした体型が女神らしいじゃん!と思うことにした。この胴の長さだと足はさらに長く、身長は2.5mくらいありそうだ。ハワイの人に”She is Pele.”と言ったら”Oh!! Pele!”とすぐに通じるだろう。ひょっとすると”I want this!”と買ってくれるかもしれない。 これまで数多く描いた女性の絵画の中でも、五本の指に入るくらい摩訶不思議な絵になった。このペレ、どんな場所に掛かっているのがいいのだろうか……。ハワイの知人でも結婚したら、ベッドルームにプレゼントするか?! ふたりの愛が燃え上がるようにね。

藤井画廊 第11回

2022年3月7日 FF-Staff 0

このたび阪急メンズ大阪で、アート作品を展示することになった。ただ、同じ時期に滋賀の佐川美術館でも個展が開催されるため、展示できる作品がほぼない。となると作品を新たに作る必要が出てくるが、十音楽団のツアー中で制作時間がとりづらい。そこで、昔のCG作品を出力して展示することにした。FFのみんなは知っている作品ばかりだろうけれど、20~30年前の物なので今の若い世代はほぼ見たことがないはずだ。というかFUMIYARTのことも知らないだろう。となると、今の時代と世代にマッチする作品はどれだ? 阪急に来るようなファッション好きのメンズが好むような作品は? 自分の中でそのようにコンセプトを決め、約20点を選んだ。 その中に、1995年に制作した【SHRINE】というシリーズの作品がある。当時は建築に興味があり、建築の本ばかり買っていた。そこから「宇宙に浮かぶ未来建築」というテーマでCG作品を作っていくことになる。人間が宇宙に浮かぶ建築を造るとしたら、やはり地球上と同じく、宗教建築こそが巨大で壮大なものになるはずだ。祀られる神は、やはり太陽だろう。日本の神道でも太陽が神なので、一連のシリーズのタイトルを「SHRINE(神社)」と付けた。 当時のプリンターは、当然今よりも性能や精度が低い。同じ作品を出力しても色合いが全然違うし、用紙サイズにも限界があったので現在のように大きく出力することはできなかった。当時は作品を大きく見せるために、作品とフレームの間に入るマットの幅を広くして、そこに落款を押して仕上げた。当時、歌川広重の版画が好きだったこともあり、落款やグラデーションの背景もその影響だ。今回展示する【SHRINE】シリーズは、額装をプラスチックのボックスにしたので、そのマット部分と落款がない。また新しいタイプの【SHRINE】となった。 今回、久しぶりに【SHRINE】シリーズの作品と向き合ってみると、不思議なことに、無機質なはずの建築物が生命体のように見えてきた。まるでエヴァンゲリオンの“使徒”のような、謎の生命体。もちろん作品を作った当時は、エヴァも使徒も知らない。今は頭の中にエヴァという知識が加えられていることで、同じ作品を見ても違う視点と発想が生まれたのだ。使徒とは不思議な生命体であり人類の敵。生物的なものもあれば無機質な多角形のものもあり、そのデザインは奇抜だ。【SHRINE】は、今までまったく生物には見えなかったし、そんなことを思ったこともなかった。だからこそ今回の感覚は自分にとっても不思議な現象。まるで、彫られたばかりの白木の仏像が何十年もすると茶色になり、何かが宿るような感じ。 そう考えると、今回の展示では細かい説明は必要ないのではないかと思えた。自分には生命体に見えるし、今の時代、似たように感じる人もいるかもしれない。あるいは、さらに別の発想があるかもしれない。【SHRINE】を今の世代が見て何を感じるかは、自由な方がいい。 *『ART of FUMIYA』展示情報  会期:2022年4月20日(水)〜5月10日(火) 会場:阪急メンズ大阪3F コンテンポラリーアートギャラリー 他  詳細は 阪急メンズ大阪ホームページ にてご確認ください。 

藤井画廊 第10回

2021年12月1日 FF-Staff 0

この絵が完成したのは、半年くらい前。マーカーで描いた三番目の作品である。今なお未発表で、正式なタイトルも決まっていない。実はこの作品には男の子バージョンがあり、そちらは先に完成していた。でも現在、男の子の方を描き直しかけている。なぜ、せっかく出来上がったのに描き直すのか。先に男の子を描き上げた時、これは女の子も描いて2枚並べるのがいいなぁと思い付いた。そこで女の子を描いていると、娘から「この子、目が寄ってない?」と言われた。一度描き直したが、それでもまだ寄っているように見えると言う。いっそのこと極端に目を寄せたら可愛い表情になるかも、と考えた。女の子が寄り目になった理由として、鼻の頭にてんとう虫を止まらせてみた。すると、なんとも愛らしい表情が生まれたのだ。絵画というよりはイラストのようなテイストになったけれど、面白い絵になった。その時点で「ん……これは、男の子も鼻に何か止まらせた方がいいんじゃないか?」という気持ちになり、完成していた男の子の目を、まずは白く塗り潰した。そうなると唇もすぼめた方がいいなぁ~、そうなると頬も少しこけないと変だぞ。連鎖反応で、結局あちこち描き直す羽目になる。鼻の上に何を止まらせようかと考えているうちに、手を付けられないまま時間だけが過ぎている。男の子と女の子を2枚並べて皆さんに披露できるのは、まだまだ先のことになりそうだ。

藤井画廊 第9回

2021年9月1日 FF-Staff 0

FUMIYARTには、ボールペン画という手法がある。グルグル~、グチャグチャ~とボールペンで線を描いて絵にしてゆく画法は、今のところ他で見たことがなく、自分の唯一のオリジナル手法だと思っている。今後も続けていくつもりだ。このペン画を、マーカー(マジック)でやったみたらどうだろう? と、ずっと思っていた。ボールペンより線が太くなるので、さらに面白くなるのではないか。それを試してみることにした。 まず、線が太いということは、ある程度大きな絵にする必要がある。マーカーの色は時間とともに薄れてゆく可能性があるので、それを食い止めるためコーティングが必要だろう。となると、描くのは紙ではない方がいいかもしれない。マーカーならキャンバスにも描けるのではないか。数種類の油性マーカーを買い、コーティング剤を塗っても滲まないかどうか試した。結果、ペン先が良くて色数も多いマーカーDELETER NEOPIKO-Colorに決定。キャンバスに描くつもりだったが、画材屋で紙のボードを見つけた。これならキャンバスより軽いし描きやすい。5ミリ厚ほどの発泡スチロールの両面に紙が貼ってあるもので、サイズも110×80cmと丁度いい。しかもボードなのでコーティング剤も綺麗に塗りやすいはずだ。ものは試しで、これに描いてみることにした。 まずペールオレンジのペンで下描きをし、ボールペン画と同じようにクルクルと描いてみる。最初は薄いパステル画のような色合いだったが、だんだんと濃い色や黒を加えていき、全体的なトーンを暗くした。最初の色も良かったなぁ~と思っても、一旦描いた線はもう後戻りできない。予想通り線の太さが面白い。かなり大胆な仕上がりになった。なんと3日で1作品を描き終えた。こんなに簡単に早く描き上がっていいのかと自分でもびっくり。絵の具と比べると10%くらいの労力ではなかろうか。これでマーカーを完全に習得した。仕上げのコーティングは、毛の柔らかい幅広の筆でバーニッシュという保護剤を5回ほど重ね塗り。全体的にムラなく空気が入らないように塗るのが、なかなか難しかった。もともと試作のつもりだったが、マーカーペン画の第1号としては、まあまあの出来栄えとなった。ん……いい感じだとは思うが……ちょっと目が大きかったかなぁ~。次はもっとしっかり構図を考えてから描くつもりだ。