十音楽団ツアー特集2
藤井フミヤ CONCERT TOUR 2021-2022十音楽団 〜青いレーベル〜 LIVE REPORT at 2022.2.27 神奈川県民ホール 十の音で紡ぐ“人生”というレコード「どんな物語が流れてくるのか。さあ、一緒に聴いてみよう」 待望の再演となった十音楽団、第二弾は、“一人ひとりの人生という1枚のレコード”をテーマにした「青いレーベル」。フミヤが脚本・演出を手掛け、“一人芝居の舞台”と“演奏”を融合させたプログラム。選曲や言葉選び、歌と演奏、ステージのビジュアル。すべてが合わさって生まれる唯一無二の総合芸術だ。2019年に行われた時点では第二弾の予定もなく、フミヤ自身も「前回出し切ったから、今回はどうしようか」と探りながら制作に入った。しかし蓋を開けてみれば、また新鮮なアプローチと充実のセットリストが深い感動を呼ぶものとなっている。2月末、神奈川県民ホールで行われた公演の様子をお届けしよう。 ※ツアー中ですが、こちらは完全版レポートですので、曲名や演出の詳細な記載があります。ご了承ください。 【プロローグ】 開演直前の場内には、柔らかな高揚感が満ちている。SEは、まさにレコードがかかっているような往年の名曲。ムーンライトセレナーデがフェードアウトすると、暗転したステージにはすでに十音楽団がスタンバイしている。中央後方から、フミヤがステージ前方へと進み出てきた。目深にハットを被り、レコード盤を手に。まずはストーリーテラーとしての語りから、十音楽団の幕を開ける。 「ここに、1枚の古いレコードがある。青いレーベルのレコード。ミュージシャンの名前も曲のタイトルも何も記されていない不思議なレコード。誰の物なのか、いつの時代の物なのかも分からない。でも、宝物のように大事にしまわれていた。きっと大切なレコードに違いない。一体、誰がどんな風にこれを聴いたのか。夕暮れ時に一人、お茶でも飲みながら聴いたのか。それとも真夜中に恋人と踊りながら聴いたのか……。きっと何度も何度も聴いたに違いない。このレコードに針を落とすと、走馬灯のように、いろんな思い出がくるくると回り出すだろう。この青いレーベルのレコード、どんな物語が流れてくるのか。さあ、一緒に聴いてみよう」 舞台後方に「青いレーベル」の文字が浮かび上がり、ぷつっと針を落とすアナログな音から、1枚のレコードに刻まれた物語が再生され始めた。弦とコーラスの華やかなイントロで始まったのは、「ムーンライト・レヴュー50s’」。赤と黄色のライトでダンスホールのような空気が生まれ、鍵盤の上を音符が軽やかに転がる。チェッカーズのデビューアルバムからの意外な選曲が強いインパクトを与えつつも、後で全体を振り返るとこれ以外ありえない絶妙なプロローグだ。 【第1章 青い光の方へ】 暗転したステージに、ひゅうっと風の音が吹き渡り「第1章 青い光の方へ」の文字。暗闇に、パンと手を叩く音が響く。「こっちかな? ん? いや、こっちだな。……分かった、こっちだ」と、誰かを探す声。フミヤは一瞬でストーリーテラーから歌い手、そしてこの章の主人公へとモードチェンジしている。 「こうやって目を閉じて、暗闇の中で君の手が急にいなくなると、僕はこの世界で一人ぼっちになったような気分だ。でも、暗闇の中でも君がどこにいるのかは、すぐに分かる。夜風の中に紛れて笑顔の気配がする。僕がどれくらい君のことを必要としているのか、確かめてるんだろ?」 優しい闇の中、声は続く。暗いからこそ目を凝らして見ようとし、耳を澄ませて一言も漏らさず聴こうとする。感覚が研ぎ澄まされていく。 「でも、暗闇の中だから光が分かる。暗闇の中から光が生まれる。ほら、君の手を見つけた。やっぱり君の手って、光みたいだ」 ステージ上部に温かな光がいくつか灯る。ステージセットがぼんやりと色づいて輪郭を表し始めた。オレンジから青、藍色への美しいグラデーション。歌は「手のなるほうへ」。先の見えない時代にこそ、その歌詞が響く。グロッケンの澄んだ音色が響き、優しい歌声に引き込まれる。十音楽団の舞台においては、すべての曲が「ストーリーの一部」となり、新たな意味や意図を吹き込まれる。語りの言葉や間合い、パフォーマンス、そして舞台セットや照明と相まって、1曲1曲の魅力が鮮やかに心に届いてくる。 「ねえ。君と僕は、何回くらい会ってると思う?」 ピアノがリズムを刻み、右手の人差し指1本を立てて話し始める。 […]